日銀の仕組み

日本の中央銀行である日銀のことについて

日銀・植田次期総裁

植田和男元日本銀行審議委員の日銀総裁就任が決定。

植田和男

4月9日に就任する植田氏は、戦後初の学識経験者の出身で任期は5年となっていますが、前任者の黒田東彦氏は2期10年務めていて、従来、日銀総裁は、通常財務省出身者と日銀出身者が交互に務めており、黒田氏は財務省出身、その前任は日銀出身の白川方明氏で、このパターンに従えば、黒田氏の後は、2018年から日銀副総裁を務めていた雨宮正佳氏の就任となるのですが、雨宮氏はこれを固辞し、政府は新しい日銀総裁に、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用することを決定したようです。
植田氏は、マサチューセッツ工科大学で博士号を取り、長く東京大学で教鞭をとり、1998年に日銀政策委員会審議委員に就任、2005年までの7年間勤め、戦後初の学者出身の総裁の誕生、副総裁には、財務省出身で前金融庁長官の氷見野良三氏と、日銀理事の内田真一氏が充てられるようです。
学者出身の総裁のもと、財務省、日銀のベテランで補佐するという体制を固めたのですが、植田氏の任命は多くの人たちにとってサプライズだったようで、おそらく、決定したのは岸田文雄首相かその周辺とみられ、異色の日銀総裁を任命することで支持率の上昇を狙ったのではないかとも言われています。

日銀当座預金40兆円、マイナス金利に

金融機関が日銀に預ける当座預金のうち、マイナス金利が適用される残高が増えているのだそうで、さらに日銀の国債購入が膨らみ、直近の適用残高は初めて40兆円を超えたのだとか。




新型コロナウイルス禍に対応した資金繰り支援の影響もあり、あふれたマネーが行き場を失っており、個人や企業への貸し出しができないゆうちょ銀行などの負担が長期化すれば、預貯金者へのコスト転嫁が進む可能性もあるようです。


日銀によれば、4月16日から5月15日のマイナス金利の適用残高は40.2兆円と過去最高になり、日銀がマイナス金利を導入した2016年2月からみるとほぼ倍増しているようです。


金融機関が日銀に預ける当座預金は


  1. プラス0.1%の金利が付く基礎残高
  2. ゼロ金利残高
  3. マイナス0.1%の金利が付く政策金利残高

3階層に分かれていて、日銀が国債を購入すると、金融機関の日銀当座預金に資金が振り込まれ日銀当座預金全体の残高が増え、①、②で吸収しきれなかった分がマイナス金利の適用を受けることになっています。


日銀は長期金利を抑え込むため、10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買う指し値オペ(公開市場操作)をたびたび実施しており、その結果、4月の国債購入額は9.1兆円に達し、直近のピークだった18年7月(8.8兆円)を超えています。

円高に後手の日銀

日銀が、2011年7~12月の金融政策決定会合議事録を公開。


東日本大震災後の円高対応を迫られ、8月と10月下旬の会合で金融緩和を決定したのですが
、その効果は限定的で後手に回り、執行部が苦悩を深める姿が浮かび上がっています。


円相場は11年7月、1ドル=79円台となり、約1カ月ぶりに80円を突破。


当時の白川方明総裁は8月4日の会合で「今がタイミング」として金融資産の買い入れ基金を10兆円増額する緩和策を決定し、同日朝の政府による4カ月半ぶりの円売り介入と歩調を合わせたのですが、その後も円高の勢いはやまず、日銀は国内景気の持ち直しなどを理由に、9月と10月上旬の会合で追加緩和を見送りました。


その間、欧州債務危機はギリシャからイタリア、スペインなどに飛び火し、金融市場の混乱とともに、円高が加速。


当時の民主党政権は10月21日、約2兆円の円高対策を閣議決定し、日銀は同27日、政治圧力に押されるように追加緩和を余儀なくされ、同日の会合で白川総裁は「(日銀は)現在も長期国債を積極的に買っていると認識してもらう必要がある」と発言。


国の借金を中央銀行が穴埋めする「財政ファイナンス」への懸念も生じていた時期で、日銀の政策判断への理解不足に苦慮していた様子がうかがえ、副総裁だった西村清彦政策研究大学院大学特別教授は「市場との対話が不足していた」と振り返っています。


円相場は10月末、1ドル=75円32銭の戦後最高値まで上昇し、その責めを日銀は負い、この後、欧米から円安誘導に理解を得られなくなり、政府の為替介入は事実上封じられ、円高対策を一手に引き受ける形となった日銀は、12年末に誕生する第2次安倍晋三政権による「アベノミクス」の大号令を受け、「異次元緩和」に足を踏み入れることになりました。